恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



花澄は慌てて携帯を取り出し、開いた。

携帯には以前に雪也から貰ったストラップが揺れている。

それを見た雪也の瞳が一瞬、切なげに歪められる。

花澄はそれに気付くことなく、携帯を耳に当てた。


「もしもし、環?」

『そろそろ行くぞ。駐輪場にいる』

「うん、わかった。すぐ行くから!」


花澄はパタンと携帯を閉じた。

今日は、環と一緒に夕飯の買い出しに行く予定だ。


……あれから、一か月。


花澄は環と付き合うことになったものの、家ではこれまで通りの態度で接している。

家族にばれたらとんでもないことになるからだ。

いつかは言わねばならないが、少なくとも二人が高校を出るまでは隠し通さねばならない。

花澄の父が環の学費を出している間は、環は屋敷ではあくまで執事に徹する。

……あの翌日、二人で話し合い、そう決めた。

なので付き合うと言っても、放課後に二人で図書室で勉強したり、二人で学校帰りに買い物に行ったりするぐらいだ。


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