恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



――――5分後。

視聴覚室に入った二人は、窓際近くで向かい合っていた。

美鈴は相変わらず完璧な身なりで、髪も服もしっかりと整えられている。

……自分とは違う、本家の娘。

美鈴は花澄を一瞥し、口を開いた。


「母から聞いたわ。繁次おじさんの工房、資金繰りに行き詰ってるらしいわね?」

「……うん」

「今月末までに1000万揃えないと、銀行に工房を差し押さえられてしまう。そう聞いたわ」


美鈴の言葉に、花澄は目を見開いた。

工房を差し押さえられてしまったら、それはイコール、倒産だ。

無言の花澄に、美鈴はコホンと咳払いをし、言う。


「……でね。あんたと一つ、取引をしたいんだけど」

「え?」

「あんたがあることをしてくれたら、私は母に工房への資金援助を頼んであげるわ。……あんたの家、今は喉から手が出るほどお金が欲しいでしょ? 違う?」

「……っ」


花澄はぐっと手を拳に握りしめた。

見下されてるとわかっていても話を聞かないわけにはいかない。


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