恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



何故、花澄が婚約を辞退したのか……。

美鈴や本家から何か取引を持ちかけられたのかもしれない。

しかし……。


例え本家から何か言われたのだとしても、少しでも自分を好きなら、花澄は自分のところに相談しに来ただろう。

そして相談しに来てくれたのなら――――いくらでも、やり様はあった。

しかし花澄は自分のところに来ることはなく、一人で辞退することを決めてしまった。

つまり、婚約を辞退したのは資金繰りだけが理由ではないと言うことだ。

資金繰り以外の理由、それは……。


「……っ、花澄……」


その理由に、心の奥底では気付いていた。

この数か月、花澄と接するたび、彼女の心の動きが手に取るようにわかった。

けれど、その事実を直視することを無意識のうちに避けていた。

雪也はぎりっと唇を噛みしめた。



――――花澄は、環を選んだのだ。



< 391 / 476 >

この作品をシェア

pagetop