恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



小百合の言葉に、雪也の頭の中は一瞬真っ白になった。

――――婚約辞退?

驚きのあまり目を見開いた雪也に、小百合は続ける。


「今、花澄ちゃん家の工房の資金繰りがうまくいってないようだから……。本家との間で、何かあったのかもしれないけど……」

「…………っ」

「この間、花澄ちゃんがわざわざうちに来て、辞退させてほしいって言ったのよ。律儀な子だから、直接言わなければって思ったんでしょうね……」


母の言葉を、雪也は呆然と聞いていた。

……花澄が、婚約を辞退した。

それは、つまり……。


「……っ……」


これまでに感じたことのない、どす黒い感情が雪也の胸に広がっていく。

――――信じたくない。

雪也の顔から一気に血の気が引いた。



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