恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



しかし、雪也が電話とはいえ自分にこんな態度を取ったことはない。

自分は、知らないところで雪也を怒らせてしまったのだろうか……。

でもだからといって、婚約など……。

――――雪也が何を考えているのか、わからない。

これまでは雪也の心が見えたのに、今は……見えない。

しかし雪也が本気だと言うことは、今の電話でわかった。


ただの厚意や勘違いであれば婚約を撤回してもらえたかもしれない。

しかし雪也が本気である以上、その可能性は限りなくゼロに近い。

それに資金は今頃、銀行まで回っているだろう。

そのお金を返せる目途が立たないうちは、こちらから婚約破棄を申し入れることはできない。

それに何より、父の工房を存続させるためには月杜家の後ろ盾を失うわけにはいかないのだ。


……もう、どうしようもない……。


花澄は携帯を握りしめ、唇を噛みしめた。



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