恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



けれどそれを思うだけで、切ない痛みが胸に走る。

ずっと傍に居た、誰よりも何よりも大事な、自分の半身。

どんな季節も一緒に過ごし、想い出を重ねてきた、愛おしい人。


……その時。

コンコン、と控えめなノック音がした。

花澄ははっと顔を上げ、扉を見た。

花澄は息を飲み、しばらく扉を凝視した後――――ガチャッと扉を開けた。


「……環……」


環は廊下に立ったまま、花澄と視線を合わそうとはしない。

――――闇に覆われた、その瞳。

怒りと哀しみと苦悩がないまぜになった、その瞳。

これまでにない悲壮さを帯びた瞳に、花澄の胸がズキッと痛む。


……環に、言わなければならない……。


胸に耐えられない痛みが広がっていく。

でも、今言わなければ……後でもっと辛くなるだけだ。

花澄はぐっと手を拳に握りしめ、環から視線をそらしたまま、極力平静を装った口調で言った。


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