恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



現実は変わらない、けれど……

環への想いは止めようもなく加速していく。

アクセルとブレーキを一緒に踏んでいるような、心もとなさ。

この先、どこへ向かうのか……想像もつかない。


「ちょっと。……最高にハッピーなはずなのに、なんでため息ついてるわけ?」

「知奈……」

「恋に呆けた甘いため息って感じでもないし。何かあったの?」

「……」


花澄は少し笑い、軽く首を振った。

工房のことを、家族のことを考えれば環との未来はないのは明白だ。

けれどそれを環に伝えようとしても『認めない』と強引に押し切られてしまう。

そして環に抱きしめられれば、口づけられれば――――自分の心は、いとも簡単に傾いてしまう。


『選べない』自分。

これまでずっと、決断を引き延ばしにしてきたけれど……。

もう、猶予はない……。


どうすればいいのか……。

花澄は重いため息をつき、コーヒーカップを置いた……。


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