恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



「……お父さん、これから藍の仕込みなの?」

「ああ。お前達、ちょうどいい所に来てくれたな?」


繁次は目尻にしわを寄せてニコリと微笑む。

花澄は目の前に立った父を見上げた。

……手伝うつもりで来たのではあるが、草木染めではなく藍染めの方とは……。

藍染めと草木染めは、手法が全く異なる。

草木染めは草木を煮出し、布と色素を結合する「つなぎ」である媒染剤を入れてそこに布を漬け込む。

布の代わりに糸を漬け込む場合もあり、染めた糸は奥の織場で生地に織り上げ、マフラーやスカーフなどの雑貨に変わる。

しかし藍染めは、藍を甕に仕込むところからスタートする。


「すくもは昨日のうちに仕込んである。今日は灰汁からだ」

「……いくつ仕込むの?」

「今回は3甕だ」


繁次は言い、藍染めの竈の方に歩き出した。

二人もその後に続く。


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