恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



当たり前だが、商談は中国語と日本語が入り混じった形で行われている。

企業によっては日本語の話せる社員も置いているようだが、そうでない企業もある。

今日のところは、繊維系の企業のパンフだけ回収して帰ろうか……。

と思った、その時。


視界の端に、『港南機業』と書かれたブースが目に入った。

ブースは場内では最も広く、スーツ姿のサラリーマン達が賑やかに商談を行っている。

花澄は暁生の言葉を思い出し、港南機業のブースの方へ移動しようとした。

そんな花澄の前に、一人のサラリーマンがにこやかな顔で歩み寄ってくる。


「コンニチハ~」

「……こ、こんにちは」

「ワタクシ、中国でモノ売ってるモノです」


超カタコトの日本語だが、なんとなく意思疎通はできそうだ。

男はやせ形でそれなりにいい仕立てのスーツを身につけている。

男はすっと胸元から名刺入れを取り出し、花澄に名刺を差し出した。

花澄も慌ててバッグから工房の名刺を出し、男に渡した。



< 111 / 389 >

この作品をシェア

pagetop