恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



「……エ? 工房?」

「はい。藍染めという、日本古来の製法で染物を作っている工房です」

「ニホンコライ! ソメモノ! 素晴らしいデスネ!」


男はにこやかな顔で言う。

男の名刺には『華商集団』とあり、住所らしき部分を見る限り、どうやら広州の会社らしい。


「小売をやってる会社デス。ニホンから商品を仕入レ、中国でウリます」

「なるほど……」

「ニホンコライの商品、中国デハ人気が高いデス。ヨク売れマス」


男は手にしていた鞄から何やら慌てて資料を取り出し、花澄に押し付けるように渡す。

中国語で書かれた、朱印付きの書面だ。

何なのかはよくわからないが、どうやら取引で使う書類らしい。

えっ、と驚く花澄に、男は身を乗り出して言う。


「ワタシは梁家南イイマス。コレあげます」

「え……え?」

「『猶豫不決、終帰無成』。商売ハ即断即決。商売のセイコウの鍵は決断力デス」



< 112 / 389 >

この作品をシェア

pagetop