恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
悄然という花澄に、知奈は慰めるようにすっと刺身の皿を差し出した。
高校時代から変わらない、活発で面倒見のいい知奈。
体型や顔立ちはとても女らしいのに、話していると男友達のように思える時もあるから不思議だ。
「しっかしあんたも不運よね。せっかくマトモそうな男を捕まえたと思ったら、イブにフラれて、しかも手切れ金。一体どうなってんの?」
「それは私も知りたい。私、まともな恋愛できるのかな……」
「私が言うのも何だけど。……それ、望み薄な気がするわ。だってあんた、最初の恋愛からしてまともじゃなかったじゃん」
「うっ……」
花澄はぐっと言葉を飲んだ。
────最初の恋愛。
確かにあれは、普通とは言えない恋愛だったかもしれない。
しかし例え過去にどんな恋愛をしていたとしても、出会いのチャンスは平等なはずだ。
そう考えると、問題は出会いや相手ではなく、自分の側にある気がする。
ここ数年『いいなあ』と思う相手はいても、のめり込むように好きになったことはない。
花澄ははぁと息をつき、言った。