恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
花澄は戦慄きながら、震える声で言った。
……ずっと心の中にあった、ひとつの予感。
それはいま現実となり、花澄はその衝撃になすすべもなく立ち尽くしていた。
「……相変わらずだな、お前は。鈍さにかけては誰もお前の右に出るヤツはいない」
そう言う声は、昔に比べて確実に低く、ハスキーになっている。
けれど口調は昔と全く変わっていない。
記憶にある瞳と全く同じ榛色の瞳は、今、憎悪を込めて花澄を見つめている。
「環、どうして……っ!」
「どうして? ……理由など明白だろう。お前は自分自身のことでは動かない。お前を動かすなら周りの人間からだ。……いや、金か?」
榛色の瞳の男──環は言いながら唇を歪めて笑う。
その面影も、笑い方も、記憶にあるものと全く変わらないのに……
ただ瞳だけが、昏い憎しみを浮かべて花澄を見つめている。
環は歪んだ笑みを浮かべ、言った。