恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~



「……あの、広瀬という男。金を持たせた女を宛がったらあっさりと鞍替えした。どうやら、お前より金が好きだったようだな?」

「────っ!?」


花澄は目を見開いた。

あるときを境に、突然金回りが良くなった広瀬。


まさか、あれは……。


戦く花澄に、環はクッと笑って続ける。


「あの男のことが心配か?」

「……っ、環……」

「お前が心配しなくとも、あの男は幸せだ。金の海で夢を見ている。……自分の金ではなく、他人の金の中で見る夢がどんなものか、おれには想像もつかないけどな?」


その言葉に、花澄は凍りついた。


分不相応な大金を手にすると、人間は狂ってしまう。

そうなった人間がどうなるか────。

環がそれを分かっていなかったはずがない。


────環は、広瀬の人生を変えてしまったのだ。


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