恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



たとえ母に信用されなくても……


花澄の目に自分がどう映ろうとも……

周りからどう思われようとも……


────諦めることなど、できない。


雪也の口元に歪んだ笑みが浮かぶ。

こみ上げる激情を刻んだかのような、修羅のような笑み……。



「……悪いけど、俺は諦めない。誰にどう思われてもいい」



呻くような、声。

地を這うような、深い慟哭に満ちたその声……。


「……雪也?」


母が訝しげに雪也を見る。

雪也は無言でくるりと踵を返した。

衝動に突き動かされるようにボディバッグをひっ掴み、書斎を出る。


「待ちなさい、雪也! まだ話は終わってないわ!」


後ろで母の叫び声が聞こえたが、雪也は振り返ることなく玄関を飛び出した……。

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