恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



母の言葉が針のように雪也の胸を貫く。

雪也は血の気の引いた顔で呆然と床に視線を投げていた。


母がそう言うのはもっともだ。

自分の立場は雪也自身もわかっている。



けれど……。



脳裏に蘇る花澄の笑顔。

ずっと昔から追い続けていた、あの素朴で温かい笑顔……。


ようやく手が届く、と思っていた。

今度こそ絶対に掴まえてみせると思っていた。


「…………」


雪也はクッと喉を鳴らし俯いた。

……胸の奥から突き上がる、熱い想い。

15年前のあの日に雪也の魂に刻み込まれた、花澄の笑顔……。


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