恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
雪也は片手をドアの縁につき、肩を上下させながら花澄を射竦めるように見る。
いつも明るく朗らかで、そして冷静な雪也のこんなに息せき切った姿を見ることはめったにない。
驚き目を見開いた花澄の前で、雪也は肩を震わせ、呻いた。
「……嘘だと思いたかった。でもまさか、本当に君がここにいるなんてね……」
「…………っ」
花澄は無意識のうちにじり、と一歩下がった。
雪也の表情を見る限り、雪也がここにきた理由は明白だ。
雪也は、花澄と賢吾のことを知ってしまったのだ。
もちろん花澄もいつまでも隠し通せるなどと思っていたわけではない。
しかし話すとしたら賢吾が同席している場で、落ち着いて話した方がいいと思っていた。
まさか賢吾がいないときに、しかもこんなに早くバレてしまうとは思ってもみなかった。
「雪くん、今日は賢吾さんがいないから、また後日改めて……」