恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



くすくす笑って雪也は言う。

花澄は疲労のあまり脱力したまま、ただ雪也を見上げていた。


「カインとアベルじゃないけど。君が兄貴と別れないなら、俺は兄貴に対して何をするかわからないよ?」

「……っ……」

「これは半分は脅しだけど半分は本気。……さ、どうする、花澄?」


どこか楽しげにも見える表情で雪也は言う。

花澄はぼうっと雪也を見上げていた。

……脅されているのに……

それでも自分は、雪也に惹かれてしまう。

それは瞳の奥に見える雪也の心が、昔と変わらない真っ直ぐで純粋なものだからだ。


「……無理、だよ」

「……花澄?」

「雪くんには、……そんなこと、できるわけないよ。賢吾さんを貶めるより、雪くんは自分自身を高めようって努力するでしょ?」

「…………」

「昔から、知ってるもの。雪くんは周りの人を助けるために努力してきた。だから……」


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