恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



ぎり、と無意識のうちに唇を噛みしめる。

……きっとこの痛みに慣れることは永遠にないだろう。

こうしてベッドに入ろうとするたびに、こうやって二人のことを思い出すに違いない。


────耐えられない…………。


まだ一日目なのに、心が悲鳴を上げている。

叶うなら今すぐにでも大阪に行って花澄を攫い、ここに連れ帰りたい。

まだ花澄の香りが残っているこのベッドに彼女の体を沈めて、彼女がどこにも行けなくなるように、足腰立たなくなるまで彼女を愛したい。


もう、環にも、兄にも……

誰にも、彼女を渡したくない……。


目を閉じると脳裏に蘇る、彼女の面影。

兄の婚約者だとわかっていても、止められない。

自分のしていることがいかに人の道に反するものなのか────。

それを知ってもなお止められない、迸る恋情に、雪也は唇を噛みしめた。


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