恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



ということは雪也は、今日は京都に泊まって明日は二人で小田原に行くつもりなのだろうか?

それに、賢吾のメールにある『守ってやってくれ』というのも気にかかる。


沈黙した花澄に、雪也は低い声で続ける。


「……どうしたの、花澄?」

「あ……えっと、その……」

「兄貴が戻ったら俺からも話をする。……でもね、花澄。東京に戻るまでは君は俺の監督下にある。今日は俺の指示に従ってもらうよ?」


雪也の真っ直ぐな視線が花澄の心を縫いとめる。

……強引で、美しい獣。

いけないと、わかっていても……。


もはや、この美しい獣に抗う術などない────。


雪也の手が花澄の手をぎゅっと握り込む。

花澄は俯き、雪也の肩にそっとこめかみを押し付けた。

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