恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
真理子の言葉に花澄は内心で息を飲んだ。
……専務。
東洋合繊で専務ということは、専務取締役だ。
しかもまさか、院まで行っていたとは……。
雪也が京大の工学部に進んだことは花澄も知っていたが、院にまで行っていたとは知らなかった。
東洋合繊の御曹司にふさわしい、輝かしいまでのエリートコース。
やはりもう、彼と自分の道ははっきりと分かれてしまったのだ。
「あれ? でも……藤堂さんとはどうなったの? あ、花澄の方じゃなくって美鈴の方ね」
知奈は首を傾げ、花澄を見る。
花澄は慌てて首を振り、口を開いた。
「……ごめん、美鈴とはここ数年、連絡取ってないからわかんないや」
「え、そうなの?」
驚いたように目を丸くした知奈に、花澄は軽く頷いた。
藤堂美鈴は花澄の同年の従姉妹で、藤堂家の本家のお嬢様だ。
しかしここ数年、分家である花澄の家と本家は断絶しており、全く連絡を取っていない。