恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
知奈はさくっと言う。
花澄は知奈の言葉に内心で息を飲んだ。
確かにこの7年、『いいかも』と思った人はいてものめり込むように好きになった人はいなかった。
それはやはり、まだ環が自分の心の中にいるからなのだろう。
あんな別れ方をしてしまったせいなのか、どうしても彼の面影が脳裏から消えない。
こんな燻った想いを抱いている自分が、これから誰かと恋愛し結婚まで辿りつけるとはとても思えない。
自分は、恋愛結婚は出来ないのかもしれない……。
言われてみると、なんだかそんな気がしてくる。
別に結婚を焦る気持ちはないが、結婚するとしたら見合い結婚の方が自分には向いているのかもしれない。
思わず考え込んだ花澄の横で、真理子が卓の真中に置かれたシーザーサラダに箸を伸ばしながら言う。
「そういえばさ。月杜君、東洋合繊の専務になったらしいよ?」
「は? 専務!? ……あ、そっか。お祖父さんが会長だもんね」
「にしても25で専務ってフツーじゃないわよ。ま、京大の院まで行ってたから、あとはひたすらエリートコースって感じなのかも?」