ただ、逢いたい



あたしは、そう呟いた。


藤井くんにはよく聞こえなかったみたいで、聞き返して来る。


だけど、あたしは黙り込んだ。



そう、あんな人友達じゃない。

人の彼氏を取るヤツなんて、友達なんかじゃない。



あたしは、歩きながらも零れそうになる涙を必死で止めていた。


隣に藤井くんがいなかったら、今頃彼女に何を言っているか分からない。


本音をぶつけていたかもしれない。


そして今、思いっきり泣いていたかもしれない。



逢いたくなかった。


2度と逢うことはないと思っていた。


まさか、会社で再会するとは思わなかった。


こんな再会、望んでなんていないのに。




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