体育館の天井に挟まっているバレーボール



第二体育館に行けばまた、あの子がいた。
金髪青目。

「ねぇねぇ、映画、観たいのある?」

「………特に。」

「恋愛映画は嫌い?」

「いえ。特には。」

「ふーん。」

何故だか私と金髪青目の子は第二体育館の脇のブロックに腰をかけて並んで話している。
彼女はいつも通りニコニコと笑っていた。
足をパタパタと落ち着きなく動かしている。
どこか浮き足立っているようだ。

「名前、何ていうんですか?」

「ん、ボク?」

コクリと頷くと、彼女は顔をくしゃっとさせニーッと笑った。
目が細くて鼻がべちゃっとした日本人顔の彼女は、青い目と金髪がどこまでも不釣合いだった。

「ミカサ、だよ。」

「ミカサ。」

「うん。」

それから何が嬉しいのか彼女はふんふんと鼻歌を歌い出した。
口笛を吹くのは縁起が悪いなどと聞いたことがあるが鼻歌はどうなんだろう。
先輩なら知っているだろうか。

「あの先輩、君に言いたいことがあるみたい。」

突然の彼女の言葉に理解が追いつかなくて無言で彼女の顔を見つめた。
そんな私に彼女はただニーッと笑うだけで。

「君の、彼氏さん。」

「…あぁ。」

「天邪鬼なんだろーけど、根は優しそうだよね。」

「………。」

どこか大人びた彼女の物言い。
唐突に、彼女は実はもう何十年も生きてる人なんじゃないかと思った。
なんというか、そんな風に感じるくらい彼女は落ち着いていて、全てを見透かしているようだった。

初めて見る彼女の様子に呆気にとられていると、腰のポケットでヴヴヴと携帯が振動した。

『今日放課後時間あるか?』

先輩からのメールだった。
私の受信箱の八割を埋める先輩からのメール。

『あります』

それだけ打って返信しておいた。

いつの間にか、隣にいたはずの金髪青目の子は消えていた。



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