体育館の天井に挟まっているバレーボール




先輩は二時間並んで人気のケーキを手に入れたことを自慢したかったのだろうか。
私があまり気のない返事をしていると、ずいっと上から先輩が私の顔を覗き込んできた。
眉間にシワを寄せ、不機嫌そうな先輩の顔が目の前に広がる。

「言ってただろ、お前。」

ぶーたれた顔で、不満そうに先輩はそう呟く。

「何をですか?」

「…ケーキ、食べたいって。」

言ったっけか?
記憶を探ってみるがなかなか危うい。
言ったとしてもその場のノリで、並ばなきゃ買えないようなやつを買うような人ではないことも分かった上で言ったはずだ。
私も先輩も、お菓子とかそーゆー甘い物が特段好きというわけではないはずだ。
でも、私がその場の会話を繋げるために言ったような些細なことを覚えていてくれたのか、先輩は。


「なんだかよく分かりませんが、ありがとうございます。」

なんだよ覚えてないのかよと呟いて項垂れる先輩は子供っぽい。

「…冷蔵庫入れといてやるから体調戻ったら食えよ。」

それだけ言ったらもう満足したのか、先輩は冷蔵庫にケーキを入れたら帰ってしまった。
看病してくれないのは、まぁ、先輩の性格からして分かってましたからいいですけど、結局何がしたかったんですか。



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