アラビアンドリーム~砂漠に咲いた一輪の薔薇~
第1話 序章
 中東の西アジア付近に、日本人には馴染が薄いが、小国ながら石油などの天然資源や、レアメタル(希少金属)、ダイヤモンドなどの質のいい宝石原石の鉱床などの採掘と輸出で莫大な財をなし発展した、エルラバドス王国と言う国があった。

 この国を治める王は、アシュラフ・ラシード・ラビブ・エルラバドス。
 28歳で緩いウェーブのかかった漆黒の髪に、漆黒の目……。中東人らしい褐色の肌に、背が非常に高く大柄で、厚い筋肉質の胸板に、引き締まった美しい体に、血統のよさを感じさせる美しく整った顔立ち……。
 その場に居るだけで威圧されそうな、非常に存在感があり、冷ややかでクールな瞳は、睨まれたら萎縮してしまいそうな眼力があった。

 砂漠の地には水源が死活問題となるが、その国には一度も枯れる事なく、大量に懇懇と美しく澄んだ清らかな水が湧き続ける大きなオアシスがあり、国を潤し発展させてきた。
 そのすぐ近くに、さほど高くはないが、山々がそびえ立ち、山頂から流れ出ずる川がオアシスに流れ込み、国の発展をさらに支えてきた。 

 その山々のひとつに、バドーニャ山と言う山があり、『アラドオリウス(幻想の滝)』と呼ばれる美しい滝があった。その滝近辺では、晴天の日でも、1年中細かな霧雨のような雨が降り、太陽に照らされ、時には輝く虹の橋がかかり、まるでこの世の物でないような美しい風景を見せてくれる。

 だれしも一目この風景を見てみたいと思わせてしまうような、そんな夢のような、素晴らしく美しい楽園のような場所。

 だが、この山は聖山とされて、なかなか容易には立ち入る事は出来なかった。

 
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