スリル【TABOO】
 京介は何もしてこなかった。ただ私の後ろにいただけだった。

 帰り際、席を立ってさりげなく様子を見ると、京介はすでに帰っていた。
 安堵しながらも、理由のない不安に襲われる。

 体調がよくないからと徹に言って、帰ることにした。

 今日はずっと徹と一緒にいられるような状態じゃなくなってしまった。
 帰って眠ってしまいたいほどの疲労に襲われていた。

 徹と別れ、駅のホームのベンチに座り、携帯電話を取り出した。

 メールが来てた。
 京介からだった。
 時間差で、三通。

(今、後ろにいるよ?)
(今日はスリル満点だったね。楽しかった)
(今度はいつ会おうか?)

 私はため息をつき、携帯電話をしまった。

 生きた心地しないほどのスリルだったけど、私も楽しかったのだ。


END

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