月のあかり
 
「お願いがあるの」
 
 舞はそう言って、ぼくの目を見据えた。
 
「そのことを裕也さんに伝えて欲しいの」
 
「ぼくから?」
 
「ええ、そうよ」
 
 どうして?とぼくは返した。
 
「彼の夢の中にも出て、伝えてあげれないのかい?」
 
 そうじゃないの。と舞は眼差しを強めた。
 
「直樹さん。このことは貴方へのメッセージでもあるの」
 
「ぼくへの‥‥‥?」
 
 タペストリーの満月が本物の月ように輝いて見え、ぼくの身体を万遍無く照らした。
 柔らかく体内へと浸透するその光に誘引され、満央と屋上で交わしたあの会話が、再び鮮明に蘇る。
 
『私は夜道に迷った人を照らして、助けてあげる役だったの』
 
 月のあかり‥‥‥
 
 
 
「ねえ、直樹さん」
 
 舞が言った。
 
「もう時間がないわ」
 
< 196 / 220 >

この作品をシェア

pagetop