TABOO 短編集


「東京は暖かいですね」
 
傍らに立つ彼女の薄いセーターにゆっくり手を差し込むと、細い身体がこわばった。

「そうかな? 君は――」

「北海道です」
 

顔では笑いながら、男の死角で滑らかな肌をなぞりあげる。


「美弥、どうかしたか?」
 

低い声に、彼女はうつむいて首を振った。
潤んだ目がさりげなく俺を睨む。


「しかし大学生か。いいなぁ」
 

男が懐かしそうに笑い、


「僕も、春からが楽しみです」
 

心からそう答えながら、指先で、美弥のホックをそっと弾いた。 





END
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