TABOO 短編集


同僚の送別会はお堅い支社長が帰ったあたりからネクタイを緩めるように座が乱れ始めた。
営業たちは上司や顧客の愚痴を共有し、栄転する仲間の肩を「お前はいいよな」と強く叩き、私と同じ営業アシスタントの女の子たちは楽しそうに笑っている。

繰り言と羨望の余波が届かない隅でそれらを眺めていると、

「真央さんていっつもソレしてますよね」

「え?」

高瀬君は私の薬指を指差した。

「仕事中は外してるのに、帰るときにはつけてる」

「ああ、一応ペアリングなの」

「8年とか、凄いっすよね」

「まあ、長すぎて彼氏っていうより家族みたいだけど」

言いながら彼のグラスが空いていることに気付く。

「まだ飲むでしょ」

ビールを注ごうと瓶に腕を伸ばした瞬間、手を取られた。

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