ぽるかLIVING

あの日あなたと。(明日目が覚めたらSS)

  あの日あなたと。(明日目が覚めたらSS)


それは、あたしがまだ小さかった頃。


「姫様、語学の先生が見えてますよ?

 姫様?


 ああ、もうどこへ行ってしまったんえしょう。」


お城の中庭の奥の大きな木は、

私の隠れ家

お城から滅多に出られないあたし

逃げたいときや泣きたいとき、

この木の登って気持ちをやり過ごす。


「お勉強嫌い~。みつからないもん。」


下で、侍女たちが捜索隊を作って右往左往する様子を

上から眺めながら、

べーと舌をだした。


「どこの野生のサルかと思ったら、

 女の子か。」


その声は根元から聞こえてきた。


「誰?」



葉が生い茂っていて、声の持ち主は見えなかった。


気のせいか

気を緩めていると


近くの葉ががさっと音がしたと思うと

ひょっこりと

綺麗な顔の男の子が顔を出した。



「すごいなあ、こんなとこに登れるんだ、
 
 しかも可愛い姫様だ。

 君いくつ?」



「ぶ、無礼者~!」


 そう言って慌ててさらによじ登るけど、


あたしが必死で登った木を

男の子は器用にひょいひょいと登って

瞬く間に追いつかれてしまった。


「降りなさいよ

 枝が折れたらどうするのよ。」


「君が降りたら、

 俺もすぐに飛び降りるけど?」






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