海淵のバカンス


「兎々は、読みにすると、とう。」
「そのとうを当て字にすると、人魚になるんだ。」
「とは人、うは、魚。」
「謎々みたいだろ」


ふふ、と初めて兎々が初々しく笑う。
そんな波人の視界は真っ暗になり、目元には冷たい兎々の手の感触だけが感じられた。
段々と息が出来なくなる。
意識が沈んでゆく。
欠落した隙間から見た最後の景色は、水面を照らす夕日で真っ赤に染まる恐ろしくも綺麗な景色だった。
後ろから、酷く嫌な音を聞いた。



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