アウトサイダー

その週のお休みは私ひとりだったから、「欲しいものでも見ておいで」と言われて、久しぶりに街の中心街に向かっていた。


母とふたりだった頃、こんなところに足を運ぶことは一度もなかった。
本屋で立ち読みした雑誌で流行りの服を知り、ただうらやましいと眺めて……。

だけど、それで良かった。
別に嫌なんかじゃなかった。


太陽は私の服を可愛いといつも褒めてくれたし、デパートに行かなくたって、太陽が……。



こんな時でさえ、私は太陽の事を思い出している。

そんな事実に気がついたとき、胸がチクンと痛んだ。
彬さんへの裏切りを、早く止めなくてはならない。


けれど焦れば焦るほど、蜘蛛の糸に絡まって抜け出せなくなった蝶のように、ただ羽をバタつかせてもがくだけだった。


< 157 / 576 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop