アウトサイダー

ドアが閉まった音とともに、私はすべてを失った気がしていた。

大切な宝物が――私から遠ざかっていった。


ほんの少しの荷物の中に、彼との思い出はたった一つだけ。
誕生日に買ってくれた、キーホルダー。

だけど、私の心の中はいつだって彼でいっぱいだ。


迎えに来てくれた役所の人と慌ただしく、それでいて静かに部屋を出る。



さようなら


太陽の家の前で一瞬だけ立ち止まって、その古ぼけたドアを見つめる。

飛び出して来てくれないだろうか。
私をさらってくれないだろうか……。

けれど、そんなことが起こるはずなく――。


「紗知」


悲痛な面持ちで、それでも私を呼ばなくてはならない母の苦痛を思うと、離れざるを得なかった。



< 75 / 576 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop