ミルククッキー
 「朝ごはん食べたら、どこ行く?」
コタツのテーブルに、体を折りたたむようにして おでこをつけて、可愛らしい顔で健二が 問いかける。

健二の仕事は、近所の美容院で働くスタイリスト。
お休みはシフト制で、店休日の火曜日と他の日のどれか。ほとんど平日だけれど、たまに今日のように 日曜日がお休みになる事もある。

美容室の同僚は、彼女が土日お休みで なかなか休みが合わず、喧嘩になる事もあるらしい。
まあ、私は 毎日日曜日と云えなくもないが・・・。

 「けんちゃんは、どこに行きたいの?」
健二は、アクティブで お休みともなれば、すぐ外へお出掛けしようとする。

 「んー。そうだなぁ。イオンとか~」
イオンは、健二の今のお気に入りだ。すぐ、イオンに行こうとする。
色々なお店も一度に見れるし、休憩スペースも ご飯屋さんも色んな種類から選ぶ事も出来るから、私も好きだけれど。

 「じゃあ、イオンで本屋さん 観ようかな~」
イオンに入っている本屋さんは、スペースが広くて いつも行ってる近所の本屋さんとは、全然違う。

 「いいよ~。ちぃは、本大好きだもんね」
本好きは、本屋に行くと理性を失う。あっという間に3~4時間たっている事もザラだ。さすがに、連れが居る時は せいぜい1時間くらいで留めておくが、それでも、友達には長いと 苦情が来る。

特に、健二は本を読まない。漫画も小説も実用書も。文字が好きじゃないらしく、ちゃんと読むのは 取り扱い説明書くらいか。
フィクションが苦手で、映画もノンフィクションがベースになっていないと、反応が悪い。人が作りあげた世界を楽しむ事が出来ないようだ。

まさに、その仕事を彼女がしているのだけど。

 そんな健二は、本屋も苦手だ。
千華と付き合っていなければ、これからも用のない場所だったろう。それなのに、千華に 本屋をねだられて嫌な顔もしない。
前の彼氏には、たっぷり苦情を言われたのに。
そこも、健二の凄いところだ。多少の甘ったれくらいなんでもない。
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