光の花は風に吹かれて
「そろそろ、現実に戻らなければいけないですね」

ポツリと呟かれた言葉に、セストの心がざわめく。それは、ルミエールに戻るということなのだろうか。

ローズはルミエールを嫌っていた。だからこそ、セストがつけこむことのできる心の隙間を持っていた。そんな彼女が飛び出した城へ――窮屈な場所へ――戻るのは、心が痛い。

「ふふっ、男性へのアプローチなんて知らなくて……ごめんなさい。もう、ご迷惑はおかけしませんから」

そっと腰を浮かせたローズ。セストはその手を思わず掴んだ。

「セスト様?」
「…………す」
「え?」

ローズが首を傾げる。

「違います。仕事の邪魔だけしないでいただければ、その……迷惑では、ない……」

なぜ、そんなことを言ったのか。明日になったら後悔する自分がいるかもしれない。だが、今のセストにはローズをこのまま放り出すことはできなくて。

「でも、私――」
「種を蒔いたのは、私です。花が咲くかもしれないのなら、見届けましょう」

セストは立ち上がり、冷たくなってしまったローズの手を握った。

「セスト様?あの、お花って?」
「貴女は……まだ、わからなくていいのです」

それは、恋の花ではないかもしれないけれど。

「明日のお昼休みなら……ケーキ屋さんに行けますよ」

そう言うと、ローズはパッと笑顔になってセストに抱きついた――
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