光の花は風に吹かれて
「あぁ……そういえば、アーロンもそんな話をしていたな」

セストがレオに報告すると、レオは興味なさげに呟いた。その視線はサインをしている書類に落とされたまま。

アーロンとは、ヴィエントの南地区の管理を任されている上流貴族コット家の当主だ。たまにその報告に城にも来る。1週間ほど前に来たときに、レオにリアと同じことを言っていたらしい。

セストがリアから聞いた話はこうだ。

最近、20代半ばくらいの若い娘が人探しをしており、ヴィエントのあちこちの町で聞き込みをしている。

その探している人物の特徴は、ダークブラウンの少しばかりくせのある髪と同じ色の瞳を持つ男性。少しタレ目の物腰柔らかな青年は質の良さそうな服を着ていたから上流階級だろう、という彼女の推測までついているのだそうだ。

リアが言うには、その娘はある日突然南地区に現れ、聞き込みをしながらだんだんと北上――つまり、城下町やヴィエント城の方角へと向かってきている。噂は彼女よりも早く伝わってきているらしい。

「お前、調べて来い」
「私が……ですか?」

セストはレオの命令に眉を顰めた。セストはレオの側近として政治に携わり、身の回りの世話までこなしている。加えて、イヴァンやディノの専業クラドールに比べれば少ないとはいっても、クラドールの仕事だってある。

人探し娘の噂を調べるほど時間はないのだけれど……

「お前を探しているのかもしれないのだろう?だったら、お前が行った方が早い」
「はぁ……」

やはりレオは人遣いが荒い。
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