光の花は風に吹かれて
『とおぉ!』

ビュッと、ルカが音を立てて風を吹かせてセストの机に積んであったカルテがいくつか床に落ちた。

セストはしゃがんでそれを拾い、ふと……1番上のカルテがローズのものだと気づく。

ローズもこの城で暮らしている以上、彼女の健康管理はヴィエント城の王家専属クラドールの役目。

身長や体重などの基本データから病歴、現在の状態は細かく記載されている。

――子供ができなかったから

――すべて、本当のことですから

先日の交流会での発言が思い出される。そのことについてローズ本人からの申告はなかったのだろうか……出産直後のリアに代わって来てくれた女性のクラドールの文字は“異常なし”ばかり。

『とおぉぉ!!』
「……ふぇっ」

セストがはぁっとため息をついたとき、ガンッと音がして本棚から分厚い医学書が零れ落ちた。

泣かせてしまった。

――現実では笑っていようって

そう言っていたローズを泣かせるのはいつもセストだ。

「ふぇっ、あぁぁぁん!」
「!」

ハッとしたときには遅く、揺りかごに寝かせていたルカが大声で泣き始め、研究室に嵐のような竜巻が起こった。
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