光の花は風に吹かれて
「恋って、いつのまにか育つものだよ」

リアはクラドールの仕事中や公務中は敬語を使うが、普段は砕けた喋り方をする。つまり、今はプライベートとしてセストに話し掛けているということ。

「花も同じでしょう?気づくと芽が出ていて、たくさん葉っぱがついて、蕾がついて、花が咲く。セストさんとローズさんの花は、葉っぱがついてきたみたい」

ふふっと笑ってリアが立ち上がる。セストは首を横に振った。どちらかというと自分に言い聞かせるように……

「私が蒔いた種は、貴女に教わった記憶修正を使ったことによる“偽り”です」

恋――そんな、甘いものではない。

リアは研究室に備え付けてある簡易キッチンでポットを火にかけてからセストを振り返った。

「ローズさんの気持ちが嘘だって思うの?」
「……その他に、何だと言うのです?」

ため息混じりに言うと、今度はリアが首を振る。

「確かに、ローズさんがセストさんのことを知ったきっかけは夢で、偽りだったかもしれない」

リアが真っ直ぐにセストを見据えて言う。
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