晴れのち雨

教室に入ると新しいテキストを出した。
今日の英語の予習をするためだ。

やばいやばいやばい...
何とかして初回の授業を乗り切らなければ



授業の時間になった。
講師が来る様子はない。
どうやらよくあることみたいで
「また遅刻かよぉ」
と隣の男子生徒の呟きに
周りがクスクス笑う。

再びテキストに目を戻すと
誰かがふらっと教室に入ってきた。



知っている煙草の香りがした。



「はい。授業始めるでー」



この声を私は知っている。




たったこれだけの事だけど
私は貴方だと分かった。





顔を上げると彼と目が合った。
その瞳は少し茶色かった。


「おっ!!アオちゃんやん!
こないだはちゃんと帰れた??
保坂です。宜しくなぁ」

二カッと笑うと授業を始めた。


前は暗くて見えなかった彼の名札には
【保坂 智裕(ホサカ トモヒロ)】
と書かれていた。




心臓の音が煩かったけど
頑張って授業に集中した。




< 19 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop