晴れのち雨

彼が私を見つめる。
ふぅ、と座り直すと

「好きな人でもできた?」

思っても見なかった質問

「いや、なんかさ....
最近の葵、ちょっと変わったっていうか
俺に対して無理してる気がして...」

どうしてそんなことまで気付いてくれるんだろう...

どうしてシュウとあの人を重ねてしまうのだろう...

「ごめんなさい。自分でも分からないの。でも、気になる人はいる。」

俯いて答えてしまう。


「仕方ないよ。自分の気持ちなんて上手くコントロール出来るものじゃないし。
コントロール出来たら面白くないだろ?
俺だって、出来ない。
葵が俺以外の人を想っているのを知っても好きだから...」


彼の言葉に顔を上げる。

「本当にごめんなさい。」

「謝らなくて良い。別れてやるよ。
でも、悪いと思ってるなら
一つだけ俺のお願い聞いてくれる?」

「うん。」

「その前に確認な。俺のこと嫌い?」

首を横に振る私に

「んじゃ、葵のこと好きでいさせて」

彼は優しく笑う。


漫画にしか存在しないと思っていた
こんなに優しくていい人。

私はどうして目の前にいる彼を
一番に想えなくなったんだろう...



「ありがとう。」


誠心誠意を込めて彼に伝えた。


彼に酷いことしたのは私なのに
とても悲しかった。

涙を流せる立場じゃない私は
涙を堪えて彼の家を後にした。




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