晴れのち雨
あ...あった。
と心の中で言うと思わずそのライターを手に取ってしまった。
表には薄紫色の線で綺麗な花が描かれていて、裏には日付が刻まれていた。
値段はそんなに高くなかった。
私にでも十分買える値段だった。
一通り手の中で隅々まで見たあと
棚に戻した。
やっぱりこんな物を貰っても
先生が困ってしまうだけだ。
先生に迷惑をかけてしまったから。
先生にお世話になったから。
渡す理由は考えれば幾らでも見つかったが私が先生への気持ちを伝えてしまった以上特別な物にしかならない気がした。
しばらくは色々なライターを眺めていたが結局何も買わないままお店を出た。
店を出ると街にクリスマスソングが流れていた。
私だってクリスマスは大切な人と過ごすのに、気分だけは落ちて行った。
クリスマスが近づけば近づくほど
先生との別れも意識してしまうから。