晴れのち雨

kindness


ビルから少し離れた所に
一台の車が止まっていた。

車の窓から手を出しドアを叩いてた手が
私を手招きしている。


一瞬...
夢でも見ているんじゃないかと疑った。


恐る恐る車に近くと車の扉が開き、
私を泣かせた人が出てきた。


私が一番会いたかった人。


保坂先生だった。


惨めな自分を見せたくなくて思わずしゃがんでしまった私に


「めっちゃ心配したやんか...アオちゃん」

と傘を差しながら私に合わせて屈んでくれた。



「5時から1時間までじゃなかったんですか??」


と腕から目だけを出して先生に尋ねた。


「うん。
ホンマは帰るつもりやってんけど、雪降ってきたけど大丈夫かなぁ〜って思ってるうちに寝てもうて、ほんで起きたらアオちゃんがおったから嬉しくて来てもうてん。」


「嘘つき。」

とだけ返してニヤける顔を再び腕の中に隠した。


「嘘ちゃうよ〜
んで、何かあったん?」

心配そうに訊く先生に


「雪で電車が遅延しちゃって...
しかも、駅に着いても大勢の人で全然前に進まないし、雪で中々走れないし、先生が見つからないし...」


まだ少し混乱していたので
事実でさえ上手く言えなかったけれど


「それは不安やったなぁ。
俺の為にありがとう。」


と優しく頭を撫でてくれた。
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