桜が咲いたら
校舎の向こうから柔らかな春風が吹いて、門へと続くソメイヨシノの並木をさわさわと揺らしていく。











「あ、

桜の匂い…」






「へ?

わかんのかよ」






「わかるよ」






甘い匂い。






ゆっくりと春が始まる匂い。










あたしの言葉に目を丸くした先輩が桜並木に向き直り、

静かにその瞳を伏せて、

全身で風を感じようとしている。




ほのかな香りを、その体で受信出来るように。






長い前髪がなびく横顔、


初めて見る制服姿。











切り取った絵のようなその綺麗な光景に、

思わずあたしは息を飲む。



胸が、つまる。


< 91 / 92 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop