大人の関係

「ロシア料理?ですか?」
「そうよ。食べたことある?」
「いえ。初めてです」
「ふふ。そうよね。ロシア料理なんてあんまりないものね。適当にコースで頼んであるけど、美味しいから期待しててね。あ、好き嫌いある?」
「大丈夫です」

ヴヴヴ!
美沙の携帯が勢いよく振動して存在をアピールする。
ディスプレイが長野からの着信であることを告げている。

奈津が見立ててくれたバッグは小ぶりだったのでハンカチと財布だけしか入らず、携帯はテーブルの上に置いていたのでバイブレーションでもよく響き、無視することはできなかった。

「長野さんです。出ますね」
一応奈津に声を掛けて、お店を出て外で通話しようとドアに向かうと
「私が出るわ」
と携帯を奪われる。


「はい。奈津です。こっちから掛けるって言ったでしょう」

「ダメよ」

「そんなこと言っても!・・・今じゃなくてもいいでしょ」


奈津の声しか聞こえないが、何か揉めているらしいという事だけは分かる。

「美沙ちゃんならすぐ横に居るわ。今からランチなの」

「・・・分かった」
美沙に電話を返して、静かに部屋から出て行った。
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