大人の関係
「マサくん、なんて言ってた?」
「・・・。ずっと一緒に居たい、って言われました。けど、聞き間違いかもしれません。奥さんのところにいるんですよね」
「それ、聞き間違えでも冗談でもない。って言ったらどうする?」

まず思ったのは、やっぱり彼と一緒に居たい。
そうは思うが、言うべきことではないことが分かりすぎるほど分かっている。
しかも、今朝長野への思いは断ち切ったつもりでいた。

言い訳でも、なにか言葉を出そうとするが、何も出てこない。

そんな美沙を見つめて、もう一度大きなため息をつき奈津は美沙の横に来て座る。

「本人がどこまで言ってるのか分からないけど、私の知ってること全部バラしちゃうわね。今回の旅行は美沙ちゃんへプロポーズするつもりだったらしいわよ」
「え??」

「あの指輪はエンゲージリングにしたかったみたいよ。奥さんには別れたいみたいなことを言ってたらしくて。彼女、眠れなかったみたい。そんなのもあって事故しちゃったのかもしれないわね」
「そんな・・・」
「気にしちゃダメよ。って、気にならない訳ないわよね」

奈津は不意に立ち上がり部屋の外へ出て行ったかと思ったら、すぐに戻ってきた。

「もう少し、ここ使わせてもらうことにしたから。ゆっくり話できるわよ」

そして、蜂蜜のたっぷりかかったクレープを切り分け、美沙の口に詰め込む。
「ほら。甘いもの食べると落ち着くわよ」

一口サイズより大きいクレープを突っ込まれもごもごしていたが、奈津の優しさだと思い、口の中が空になると美沙はなんとか笑顔を見せた。
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