Last flower【執筆中】
16.
「ポンちゃん!おめでとう。大きくなったわねぇ、いくつになったの?」
 
その誕生日パーティは、白々しいほどに盛大な、冷え冷えとした空気の中で行われた。
 
出てくる「ごちそう」は、いつも通りに不味かった。
 
涙ぐんでいるようなmotherの言葉を聞いた瞬間、「トイレ」と立ち去ったチャルは二度と戻って来ず、

代わりに立ち去った後の椅子に突然腰掛けて来たのは、赤い巻き毛に、似合わないメイクをこてこてにしてる女の子だった。

「ね、あんた達、チャルと同部屋でどう?」

「どう…って?どういう意味?」

本当に、意味がわからずカスカが聞き返すと

「おっかなくない?」
 
巻き毛はあまり整っていない顔を更に歪ませ、小声で言った。
 
おっかない…?
 
双子は同時に考えた。けれど、彼女達がチャルに抱いた印象の、どこにもそんな言葉は見当たらなかった。
 
黙っている双子に巻き毛は続けて言った。まるでこれがメインの話だ、と言わんばかりの早口で。

「あいつさ、どうしてここ入ったか知ってる?

売春してることが妹にバレて、両親にチクられたんだって。

そんで、チクッた妹の両手の爪全部ペンチで剥がしたんだって!信じられる?超キレてない?

そんで家から追い出されたんだってさ。私、ほんとあいつと同部屋じゃなくって良かったぁーー」

「…私はあんたみたいなヤツと同部屋じゃなくて良かったって今思ったけど」
 
へ?という顔をしている巻き毛から目を逸らし、「行こ、ユルカ」
 
カスカはユルカの手を握り、席を立った。

なぜだかとても気分が悪かった。ポンへのプレゼントをテーブルに残したままドアへ向かうと、

またしても壁に寄りかかったまま編み物をするカイがいた。

その隣に座っていたスイムが

「あれっ?部屋戻るの?」

と、小声で聞いてきた。双子は頷き、カスカはカイを見下ろして「Tシャツありがとう」と言った。ユルカは何も言わなかった。
 
カイは二人を交互に見つめた後

「あんた、カスカだよね。なんでそんな怒りながら『ありがとう』とか言ってんの」
 
と言い、初めて見る笑顔で笑った。

カスカはこの場所に来て初めて自分とユルカの見分けをした彼に驚き、

また、その笑顔を(花が咲いたみたいだ)と思った。

そして(もっとこの顔が見たい)とも思った。

 それはカスカがユルカに、初めての秘密ができた瞬間だった。
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