Last flower【執筆中】
…水中にいる。もがいてももがいても少しずつ身体は水に沈んでいく。

「あんたが悪いのよ」

自分にそっくりな声が聞こえる。誰?目も、開けていられない。

苦しい。もう、やめようよ。また誰かが言う。死んじゃうよ。

本当に死んじゃう。

死んじゃうって誰が?私が?嘘。嘘でしょ?

思い切り力を振り絞って、一瞬水面に顔を上げた。そこにいたのは…

………私。ううん。違う。私によく似た女の子………

「ハッ!!」

目が、覚めた。カスカは肩で息をしながら、ふいに視線を感じて振り向いた。チャル。

「……どうしたの?」

白い細影は小声で言った。

「………」

「あたし、知ってるよ。ここんとこあんたって変。うなされてばっかりいるでしょ?」

「………」

「ユルカかカスカかわかんないけどさ。嫌な夢でも見てるんじゃない?

睡眠薬あげようか?眠りが浅いから、変な夢ばっかり見るのよたぶん」

「…ううん。いらない。ありがとう。…私、カスカだよ」

ユルカは身動き一つせず、静かに寝息を立てている。

カスカはチャンスだと思い、聞いた。

「チャルこそ…最近機嫌も悪いし顔色も悪いよ。何か、あったの?

心配事とか…」

身をよじり、小さなテーブルに置いてある煙草を手に取りながら

「心配事ねぇ…」とチャルは薄く笑った。

「心配と言えば心配かな。…でも、考えても仕方ないなって思う。

あたし、機嫌悪くしてた?ごめんね」

優しげで淋しげな。カスカをますます不安にさせるような返事だった。

「…何か、あったら言ってね。お願いだから、む…」

『向こうに行ってしまわないで』と言いかけて慌ててカスカは口を閉じた。

「ん。サンキュ、カスカ」

金の糸の髪に隠れて、チャルの表情は、わからなかった。
< 25 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop