恋の訪れ
「なんか増えてるし…」
「ま、いいじゃん、いいじゃん」
ボソリと呟くあたしに真理子は上機嫌に言う。
どう見ても、あたしの知らない人が運転してんじゃん。
と思った時。
「ちょっと人数増えてっけど」
助手席からサクヤ先輩が笑みを向けた。
どう見たってサクヤ先輩とユミちゃん以外、知らない。
「ねぇ、昴先輩達は?」
真理子は車内を見てユミちゃんに問い掛けた。
「別の車らしいよー。あ、でも昴先輩は遅れてくる?とか…」
「ふーん…でも昴先輩って忙しいそうなイメージだよね」
「なんか危険な香りしない?」
フフっと笑ったユミちゃん…
危険じゃなくて、悪魔でしょ!
なんて言葉は飲み込んだ。
「危険な香りねぇ…どんな匂いだろうね、莉音」
「え、」
思わず振られた言葉に声が詰まる。
ってか、あたしに振らないでよ!
「昴先輩だよ!」
「知らないよ、そんなの」
「莉音ちゃん、大丈夫だよ。あたし昴先輩の事とったりしないから」
「はい!?」
思わずユミちゃんの言葉に声が大きくなる。