恋の訪れ
「なに、お前帰んの?」
昴先輩から見下ろされた途端に、少し目が泳ぐ。
この前の事もあってか、まともに昴先輩の事を見ることは出来ず、
「えっと…」
言葉すら出てこない所為で俯いた。
「昨日、お前来てなかったからさ、」
そう言いながら鞄の中からビニール袋を取り出しあたしに差し出す。
俯くあたしの視界に昴先輩の手が見える。
「…え?」
「同じやつじゃねーけど…」
受け取った袋を覗くと、袋に入った色とりどりの金平糖が目に入った。
「金平糖…」
「それで我慢しろよ」
それだけ告げると昴先輩は正門をくぐり抜ける。
そんな先輩に、
「昴先輩!」
あたしは叫んだ。
「なに?」
「…あのっ、」
「……」
「…いえ、ありがとうございます」
ほんとうはそんな事を言うつもりじゃなかった。
聞きたかったのは、どうしてあたしの家を知ってたんだって事。
でも、それが聞けなかった。
物凄く聞きたかったけど、どうしても聞けなかった。