恋の訪れ

「で、でもっ…」

「じゃあ、払いに行けよ」


面倒くさそうにそう言った先輩はため息交じりだった。

ほんとにめんどくさそうに…


「え…、でもまた戻りたくないですし」

「だったら別にいいだろ」

「…そう、ですね」


そんな風に言われてしまえば、こんな風に返す事しか出来ない。

やっぱ、悪魔なだけに昴先輩は怖い人。


噂わチラチラ聞いた事があった。

よく真理子も言ってたし、他の女の子達だって騒いでいた。


まだ入学して少ししか経ってないけど、嫌ってほどに昴先輩の名前は聞いた。

だからこの人どこがいいんだろうって思ってた。

不釣り合いの桜の木の下でいつも寝てる人。

みんなが言うから、その姿をあたしは意味もなく眺めてた。


別にそんな話し聞きたくないけど、勝手に耳に入りこんでた。

余計なお世話かも知れないけど、もっと性格良かったら絶対いいのに。

この男は絶対、ヒロくんには勝てない!


「あ、あのっ、」

「…んだよ」


また吐き出してしまった言葉に、昴先輩は面倒くさそうに振り返る。


「あの、真理子なんか言ってましたか?」

「真理子?」


誰だ?と言わんばかりに顔を顰める昴先輩に、


「あ、あたしの隣に居た子です」


ちゃっかりと説明をした。
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